REPORT_10 端材がつなぐ-産官学連携丹後ちりめんSDGSアップサイクルプロジェクト

創業300年の歴史を持つ丹後ちりめん。女子美術大学 短期大学部 造形学科 デザインコース テキスタイルでは平成23年より京丹後市の協力をいただきながら事業者と製品開発、共同事業、現地視察、オンライン特別講義など様々な取組みを行ってきました。それぞれ特徴ある生地を生産されておりその生地や工程にふれる機会をいただけることは学生にとって大変学びの多いプロジェクトとなっています。

昨年度からはSDGs 未来都市計画に基づく事業のひとつとして、織物の生産過程で発生する端材や不良在庫等を活用し、繊維製品の開発及び市場開拓に向けた市内織物事業者と連携した、アート作品 やバッグなどを制作し、第94回ギフトショーや2022 9月NEW  ENERGY、丹後織物工業組合(特設会場)で開催される「第73回丹後織物求評会」で発表し、好評を得ることができました。

今回は数多くある京丹後市の機屋さんの中から端材プロジェクトに素材協力をいただいた事業者様の紹介と産官学連携の取組みについていただいたご意見、ご感想を抜粋して掲載いたします。

■産官学連携の取組みについての感想を記載します。

織元金重(網野町網野) https://tirimen.com/

昭和28年創業。歴史ある建物に置かれた十数台の機がガチャン、ガチャンとリズミカルな音を奏でます。丹後では50年の間に撚糸、組織の組み合わせた多様なちりめんが生み出されました。その発展に貢献されてきた織元金重。紋織を活用した写真そのものを織物にする「写真織り」の卓越した技術による生地は、絹糸が複雑に絡まり、妖艶な美しさを醸し出しています。

■染色されたちりめん生地に抜染、ポップなシルクスクリーンプリントを施すなど端材だからこそできる挑戦を見て、縫製が難しいちりめん素材を逆手にとった学生視点でのアイデアはとても興味深く感じました。

谷勝織物工場(網野町掛津) https://tanikatsu762.wixsite.com/tanikatsu762


大正八年八月に綿織物製造工場として創業。現在四代目の谷口能啓さんがお父様の後を継ぎ丹後でも数少なく貴重になった「水撚りの八丁撚糸」を緯糸(よこいと)に使い伝統的な縮緬地である一越ちりめん・古代ちりめん(二越)・三越ちりめん等を製造しています。谷口さんはDJ活動などもされ、クラウドファンティングや新しい活動を積極的に行っています。変わり続ける時代の中、伝統を受け継ぎ守ることが新しい未来の色を作っていくのではないかと谷口さんの凜としたお仕事に向き合う姿に感じました。

■産官学連携事業に始めて参加しました。端材を和紙に漉き込む、フリーレースでちりめん同士を縫合するなど、学生ならではの発想に販売を目的としていないからこそできることに、ものづくりの楽しみを感じます。その過程を共有することは事業者にとっても魅力的なのではないでしょうか。

田勇機業株式会社(網野町浅茂川) http://www.tayuh.jp/


和装だけではなく独自の取組みで広幅の洋装用の生地なども製造されパリオートクチュールコレクションでの公式コレクション「Adeline Andre」のメイン素材として採用されるなど国内外で高い評価を受けている丹後ちりめんの先進的事業者です。緯糸にねじりを加える撚糸の工程から機織りまですべてを一貫して行っている工場は何度も見学させていただいており、学生たちの貴重な学びとなっています。

■端材やデッドストックがどのように製品になり市場に出るか興味があります。学生との取組みにおいては必ず製品にしなければならないということではなく、学生ならではの大胆な発想でどんどん斬新なアイデアを我々に提案していただき、新たなものづくりにフィードバックできれば産学連携の理想的なかたちになるのではないかと思っています。

株式会社二条丸八(大宮町善王寺)http://nijo.co.jp/


昭和31年に創業され、和装婚礼衣裳のメーカーとして独自の織CADシステムを使い、紋紙を一から制作、衿元の柄もぴったりと合わす総絵羽の「織打掛」を主に研究開発されています。「伝統産業」を通じて常に新しい和装婚礼衣装を提案されています。

■素材を組み合わせたり技法を重ねたり、手作業でしかできないことなど、我々がコストや手間を考えてブレーキをかけてしまうようなことを難なく突破するのが学生の醍醐味でもあり、羨ましさを覚えました。「端材をつかう」ことがコンセプトの一つであればその生地自体が安定して供給できるものではないことや、B反や端材はメーカーにとって本来あまり出てほしくないものであること、そのあたりの視点も加えることで生地がたとえ別の物になっても「オートクチュール」「プレタポルテ」的な考え方の分岐が明確になると感じました。学生が丹後という地域や織物、和装婚礼などについてたくさん調べていただいたと思いますし、私たちの関わる世界を知る一つのきっかけとなったのは大変うれしく思っています。

遊絲舎(網野町下岡) https://www.fujifu.jp/


強い藤の蔓からわずかにとれる繊維で最古の原始布「藤布」。世界でも丹後地方のみでしかその技術が残されていません。藤蔓の伐り採りからすべての工程を昔ながらの方法で行なっている遊絲舎様の現代の織物と融合させた藤布は、荒々しい樹木からは想像できないほど繊細で、絹とは違う光沢感があります。
その布の持つ生命力の強さから自然と一体となり身を守るために作られた太古の人々の布に対する思いが伝わってくるようです。

さいごに・・・・・・・・・・・・・・・・

丹後ちりめんに初めて触れた学生たち。まずはその生地が生まれる土壌や歴史から調べ、少しずつ丹後ちりめんの知識を深めていきました。コロナ禍の中、事業様のご厚意によりオンライン講義や報告会なども開催いただき1年間丹後の生地に向き合うことで学びを超え、卓越した技術に対しての尊敬の念やそれぞれのDNAに組み込まれた日本人の感性を認識したと思います。

命を紡ぐ絹糸。伝統を守りその技術を未来へつなぐ事業様の皆様。学校で学んだ技法を端材に施し、自由に使わせていただきながら自身の研究へ導くことができましたことを厚く御礼申し上げます。これから社会へ旅立つ若い創造者たちが、この経験を元に日本の生地産地に興味を持ち、豊かなものづくりを次世代へ継承するべく活躍してくれることを祈ります。(竹中)

協力事業者
織元金重(網野町網野)、谷勝織物工場(網野町掛津)、 田勇機業株式会社(網野町浅茂川)、株式会社二条丸八(大宮町善王寺)、 遊絲舎(網野町下岡)丹後織物工業組合(大宮町河辺)

REPORTER : 竹中明子 (TDA執行委員)


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