REPORT_13 萌蘖(ほうげつ)「百年続く服づくり」 / あまづつみ まなみ

南あわじにUターン移住し、ショップをオープンして12年。生まれ育った淡路島でいつも見てきた海の色を洋服にして身に着けたいと活動する「あまづつみ まなみ」さんを訪ねました。

◼︎古民家を改装したアトリエとショップ

南あわじは瓦の産地で、ショップへ向かう道中で瓦を使用したモニュメントをあちこちで見かけました。アトリエの屋根瓦はお寺のような丸い瓦が使用され立派な鬼瓦も施されていましたが、阪神淡路大震災の際もビクともしなかったそうです。そんな親戚の古民家と小屋を改装し、趣のあるアトリエ&ショップを2011年8月にオープンされました。

初めて私が訪れたのは約10年前、滋賀の友人を通して出会ったまなみさんに会いに行きました。素材にこだわったChar* by cheep-cheep ブランドを設立されていて、その後 滋賀の麻織物を使用していただくことにもなりました。
◼︎あまづつみ まなみさん 略歴

神戸ファッション専門学校を卒業後、上京し45R、東京イトキン シビラ、ホコモモラ 
などアパレル数社に勤務されていました。その後出産を機に退職し、自宅で外注のパターンナーの仕事を始めて Char* by cheep-cheepを設立、 2007年にUターン移住されました。

◼︎ノラふく
・淡路島の刺し子「ドンザ」との出会い。

ドンザは藍で染めた木綿布を数枚重ね、防寒や補強のために刺し子を施した漁師着のこと。震災後の倒壊家屋から発見されたそうです。

まなみさんは、ここで初めて淡路島に藍染めがある事を知り衝撃を受け、淡路島に帰って来た意味がここにあるのではないかと感じたと言います。

・滋賀の自然に寄り添いながら生活することを愉しむ集まり「ノラノコ」との出会い

そんなタイミングで、農作業に従事するにあたって機能的でカッコ良い野良着を作って欲しいとの依頼があり、「ノラふく」をつくることになります。

どこで藍染めをするかを考えた結果、ノラノコの活動拠点である滋賀の正藍染紺屋・紺喜染織さんに通うようになります。

最初に藍染め体験で訪れてから10年。今ではすべての藍がめを使わせてもらえるまでの信頼関係を築かれています。まなみさんの月に2回の藍染め通いは、紺喜さんにとっても次代へ継ぐ道筋になっている事と思います。

◼︎意味がある服

「ノラふく」を作るようになって10年が経ち、最近染め直しの依頼が増えているようです。
そこには、大切に着続けて体に馴染んだ着易さ、愛おしさを感じると言います。

継ぎを当て、染め直し、また継ぎを当て、染め直す。そうして長く着続けられる一生もの。
これこそが、まなみさんが求める服の在り方です。そしてそれは「ドンザ」に通じています。

滋賀県多賀地域には「ぼっこ」と呼ばれる山仕事着があります。世界的にもBOROは注目をされています。まさに今、時代が求める物を大切にする暮らしが生み出した「美」が感じられます。まなみさんの「ノラふく」にも着続けることで生み出される美があるのだと思いました。

◼︎アップサイクル

・デザインを学ぶ学生とのコラボでアップサイクルブランドを企画中とのことでした。
セールをしないので在庫として持っているChar*の服を、学生の感性でリメイク。
丁寧に縫製をしているので大事に蘇らせたいという、まなみさんの思いを感じました。

◼︎服づくりに対する思い

素材が大事、デザイン先行ではなく、あくまでも素材がありき。トレンドに振り回されることなく着易さ、締め付けないゆったり感を大事にしてこられました。

50代に入り、同世代が自分のために服が買えるように戻って来たと言います。また人生100年時代、身体に不自由さが出ても着易い服、心地よい素材、環境に配慮した服づくりは共感を得ると思います。作り手と使い手の思想が合致してきた今、今後のまなみさんの活動が益々楽しみです。

半面、若い世代が地球環境の事を意識しすぎて、ものづくりしにくい時代だと感じているそうです。若い才能にどう刺激を与えていくか、自分の生き方を“服”に表現し、ファッションの可能性、自分自身の可能性を拡げて欲しい。そんな思いから、学生とのコラボ企画を立ち上げ応援していこうとされています。自分の服作りの本質美を極めつつ、次代に継いでいかれる姿、
10年振りに訪れた淡路島の地で、まなみさんの信念を強く感じたインタビューとなりました。

「いまここにある現代の日常にaiが溢れますように。輪になり、ひらき、つながりますように。」あまづつみまなみ

REPORTER : 北川陽子 (TDA執行委員)

萌蘖(ほうげつ)HP

「ドンザ」

紺喜染織について



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