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REPORT_18 suzusan | 2025春夏 新作展示会

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  ・7月31日(水)-8月4日(日) 10:00-18:00 ・EATME GALLERY 南青山2-22-17川上ビル9F ・テーマ:“PLAY” 子どもの頃に時間を忘れ夢中になって遊んだ シーンをイメージした、カラフルで楽しげな色柄を表現したコレクション TDA正会員の村瀬弘行氏が率いる【suzusan 2025春夏新作展示会】に 8/1(木)にお伺いしました。 会場に到着すると、テーマである【PLAY】らしいカラフルな色が目に飛び込んできました。本当に天然繊維かな?と思ってしまうほど、色鮮やかなアイテム達が出迎えてくれました。特にイエローはとても発色の良いカラーでした。 柄はトランプをイメージしたモチーフを、絞りテクニックで表現されておりました。一見して思った通り、その表現はなかなか難しいようで、プロの皆さまでも特にクローバーは、難易度が高いとのことでした。 また、スマイルマークも絞りで表現されており、楽しさ満点。着る事で毎日が楽しくなりそうです。 ベースのマテリアルは、モンゴルやネパールのカシミアが主体です。アパレルブランドでも、春夏企画でのカシミア展開は珍しいそうですが、一年の多くをカシミア素材で過ごせる欧州に多くのクライアントを持つ、スズサンならではの特徴と言えそうです。 他にも、播州織のギンガムチェックや、度詰めのコットン、今回は春夏でしたので展開されておりませんでしたが、尾州のウールなど、日本のテキスタイルも色々と取り入れられております。いつものコレクションでは、リネン素材も多く見受けられますが、今回から新規にシーアイランドコットンも採用されて居りました。 https://seaislandclub.jp また、コットンライクのシルクもアイテム展開されています。 触感で本物のマテリアルを感じ、視覚でパターンの面白さや楽しさを感じる。 とても今を感じるアプローチだと感じました。 suzusanは、長い間人間が作り出すテキスタイルの加飾テクニック「絞り」で、私たちの日常着に新しい風を吹かせ続けています。時代に沿った変化とともに、手で作る事の大切さを改めて感じる事ができました。 REPORTER:大場麻美(TDA理事長) suzusan:website https://www.suzusan.com/ja/ Instagram:suzusan offic

REPORT_17「心踊る日常」/ イラストレーター hirotajunko

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日々の生活に彩りを添えること、自分だけの特別感を味わうこと、そして様々なカタチで イロが持つ力を伝えていく活動をされている、TDA正会員の廣田純子氏をご紹介します。 【アフリカ文化との出会い】 大阪生まれ。京都市立芸術大学ビジュアルデザイン科卒業後、テキスタイルメーカーのデザイン部3年勤務後に渡仏。パリで「フランス国立高等装飾美術学校(ENSAD)」にてイラストレーションを2年半、ペーパーデザインやテキスタイルデザインデザインを学ばれました。フランス在住時に、モンマルトルのテキスタイルショップで「アフリカの布」に出会い、西アフリカに魅せられブルキナファソへ。友人宅に約20日間滞在し、現地の染織を見て学ばれたそうです。その中で、風土から生み出される文様や技法は自国日本にも通じることに気づき、日本を見直すきっかけとなり日本でものづくりをしたい気持ちが大きく動いたとのこと、フランスとアフリカ文化に影響され帰国されます。 帰国後は再びテキスタイルデザインの仕事を始められます。現在フリーランスとしてイラスト、テキスタイル、雑貨、絵本など日仏で活動されています。 ヒロタさんとの出会いは確かTDAのセミナーで、一時帰国されていた頃だったかと記憶しています。ヒロタさんのイラストのセンスに惹かれ、展示会のイメージに合わせて麻の布に手描きしてもらうことがありました。その頃から今に至るまで長くお付き合いをいただいています。 【フェアトレードとの出会い】 その後、フェアトレードの会社との出会いが、ヒロタさんの活動に大きな影響を与えました。 社会的背景もあり、循環のことに関心が深まるタイミングだったと思います。 使われたものに再び手を加え新たなものへ、そして次に回していくという姿勢、ヒロタさんなりの感性が活かされて行く事になります。 古着にもう一手間加える。染めて刺繍してペイントして 「巡り巡る循環する服」。 リメイクすることや端材を活かす事に注目をし、また手元にある残布や残糸を活かしたアクセサリー作りが始まって行きます。 「アップサイクル」としての作品が定着していきます。 【子ども向けWS】 美術館、百貨店、ショップなどで子ども向けWSにも熱心に取り組んでおられます。 何でも簡単に手に入る時代に、何もないところから生み出す力、創造力を養っていきます。 様々な素材(端材)に触れ、感覚、ひらめ

REPORT_16 命を績む原始布「藤布」/ 遊絲舎・小石原将夫さん

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■藤布とは 4月下旬から5月上旬にかけて甘い香りを放ちながら、薄紫の可憐な花房を垂らす藤の花。万葉集にも歌われている日本古来の花木、藤。可憐な美しい花を守るようにその蔓は強い陽射しを浴びながら太く絡み合いながら成長していきます。 京都府京丹後市で100年以上の歴史を持つ絹織物を製造してきた機屋小石嘉織物の4代目:小石原将夫さんは「藤布」を現代に伝える織元「遊絲舎」を営んでいます。 織物の原点、藤布は苧麻、葛、しな、芭蕉布と並び、5大原始布として古代から人々の体を守ってきました。江戸時代、木綿が普及するまでは全国で盛んに織られていましたが、次第に途絶え幻の布となっていました。 昭和37年に京都府教育委員会の民俗資料調査により丹後の山間の小さな里、上世屋で海女が用いる”スマ袋”が藤布で作られていることが発見されました。 そこの女性たちが仕事の合間に藤布を織っている様を1978年小石原さんが30歳の時にテレビ番組“木を織る女たち”で見て驚き4~5年通いましたが、作業工程のタイミングが合わず、教えてもらえなかったそうです。しかし現在では在日本で唯一その技術を伝え続けている丹後藤織り保存会のメンバーとして京都無形文化財の「藤布」を守り続けています。 小石原さんの織る藤布は、繊細で肌に溶け込むようなしなやかさときらきらと輝く透明感があり、繊維が体の奥まで染みわたって来るような感覚は自身の奥にある太古の記憶を呼び覚ましてくれるような気がします。 パリで開催される世界最高峰のテキスタイルの見本市「プルミエール・ヴィジョン」の中でも、希少価値や技術の高い匠のみが出展できる特設部門「メゾン・デクセプション」への招待出展等、海外有名ブランドからも高く評価されています。 ■ 藤布ができるまで 藤布の制作には、まず山で自生する藤を採取することから始まります。現在では山が荒れていて入手が困難になってきたそうです。採取した藤蔓は表皮を剥ぎ、中の皮(アラソ)を木槌で叩きながら取り出し、強いアルカリで不純物を取り除くために灰で炊きます。 その後、コウバシという道具を使って冷たい川水でアラソをしごきながら洗い繊維を取り出します。その繊維を結び玉ができないように結んでいくのですが「績(う)む」というこの作業に一番時間がかかるそうです。 絹や綿のような綿状のものから繊維を引き出し、撚りをかけて糸を作る

REPORT_15 130年の歴史 「藍染筒描」 / 長田染工場

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■伝統の技 筒描き 神々が集う場所、出雲。出雲市街中心部を東西に流れる高瀬川沿いに筒描藍染の紺屋 長田染工場があります。 「筒描」とは円錐の渋紙でできた円錐形の筒の中に防染糊を入れ、筒先から少しずつ糊を押し出しながら布に文様を描く技法です。 江戸時代、綿花栽培の普及に伴い、木綿に良く染まる藍が徳島より全国にひろがり、各地の紺屋(こうや)で庶民の暮らしを彩る文様を描いた布が染められていました。 この高瀬川沿いにも明治時代、数多くの紺屋が立ち並び1点ずつ描かれる筒描きは祈りの形として、筒描による布団や夜着、風呂敷などが制作され、婚礼や出産、祭礼の際に贈られる品として用いられていました。 現在、この希少な筒描藍染技法による紺屋は全国で2件のみ。1880年創業の長田染工場は4代目の長田茂伸さんと5代目の長田匡央さんが父子で営まれ、その希少な技術は「島根県指定文化財」、「島根県ふるさと伝統工芸品」に指定されています。 筒描きの糊が描き出すゆるやかなまろみと大胆な造形。伸びやかな線のタッチを左右する「防染糊」。その時の気候や湿度によって、もち粉、石灰、塩を丁寧に練り合わせ、調整しているそうです。 糊で描かれた白い線を際立たせる「藍」は兵庫県播州産のもの。 ■制作工程 藍に浸けるため両面から糊を置く。糊の乾燥具合表と裏に差異が生じるため、素早い作業が必要となる。 藍と糊の具合を感じながら会話をするように布を静かに藍につける・・。 藍の甕から出した布は空気に触れながら、少しずつ美しい青に変化していく・・。 ポタポタと藍の液が滴る布の下から布にしっかりとくいついた糊が力強く、そして優しい絵柄が見え隠れする・・。 息をのむような一連の工程は神聖な儀式のように感じました。 筒描藍染に描かれる吉祥紋様は日本に遣唐使が廃止されたことで独自性が生まれ、当時、繁栄、長寿、縁起が重要だった事で伊勢から意匠が伝わり全国に広がったと教えていただきました。 歴史ある島根筒描藍染の文様。意匠に込められた先人たちの精神や心。その技術と世界観を引き継ぎながらも自分にしか出せない表現を大切にする長田さん。既存の枠を超えた革新的な個性が伝統をより強靭にするのだと感じました。大手ホテル、ファッションデザイナーとのコラボレーションやオリジナルデザイン作品に積極的に取り組み、筒描藍染の可能性を広げて行きたいとのこと。

REPORT_14 伝統文化からポップカルチャーへ /高田織物株式会社

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岡山県倉敷市は多くの繊維製品を製造しています。国産ジーンズ発祥の地を代表するデニム製品や県内で8割ほどのシェアを持つ学生服のウェアをはじめ、バッグなどの生地である倉敷帆布は前回取材し、j布レポートでも取り上げました。 この度は学生服同様、多くの全国シェアを持つ畳縁織物を製造している高田織物株式会社のものづくりを紹介いたします。卒業生ゼミ生が高田織物に勤務していたこともあり、工場に隣接するショップ「FLAT」に何度か訪問していました。 柄の豊富さや畳縁としての用途以外のものづくりに興味を持ち、高田織物株式会社代表取締役高田尚志様にお会いし、先のものづくりのお話をお聞きするため、取材させていただきました。 畳縁織物は約8cmの幅で、岡山県内で製造される真田紐と同じく細幅タイプの織物になります。ルーツも重なる部分があり、高田織物は1890年頃創業の真田紐製造から段階的に畳縁織物製造に変わります。 2012年に初めて工場で織機や畳縁織物がぐるぐると巻かれた状態を見た時、非常に新鮮な印象だったことを思い出します。現在、畳縁織物製造メーカーは倉敷市唐琴地域に15社程度あり、最盛期よりは社数は減少しましたが、全国8割程度のシェアがあり、まだまだ伝統の和を支えています。 高田尚志様に会社の特色を伺ったところ、「多品種」、「小ロット」、「短納期」とのことでした。品種は約1,000種あり、先のFLATでそれらの生地を見ることができます。 FLATは畳縁織物を多くの人に知ってもらうために2014年にオープンしています。「畳の縁に使われる畳縁織物を選んで購入する機会はそもそも少なく、その機会がなければあまり関わることのない織物である。このようなことを意識し、接する機会を増やすため、多品種の生地を紹介できるショップFLATにつながった」と高田様はお話されました。 また、クリエイターとコラボした商品展開や、一般の方が畳縁織物を活用したものづくりができるよう、導くためのハンドメイドブック作りも積極的に行われています。 そして、クリーマーのクリエイターとのコラボやバッグ作りのコンペなど、畳縁織物生地からの自由な発想を導く素地を提供される企画が多くあることを知りました。高田様曰く、メーカーは生地を作る、そこからのデザインやものづくりは幅広く生み出されていくような環境作りを考えながら行動されるお話を聞

REPORT_13 萌蘖(ほうげつ)「百年続く服づくり」 / あまづつみ まなみ

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南あわじにUターン移住し、ショップをオープンして12年。生まれ育った淡路島でいつも見てきた海の色を洋服にして身に着けたいと活動する「あまづつみ まなみ」さんを訪ねました。 ◼︎古民家を改装したアトリエとショップ 南あわじは瓦の産地で、ショップへ向かう道中で瓦を使用したモニュメントをあちこちで見かけました。アトリエの屋根瓦はお寺のような丸い瓦が使用され立派な鬼瓦も施されていましたが、阪神淡路大震災の際もビクともしなかったそうです。そんな親戚の古民家と小屋を改装し、趣のあるアトリエ&ショップを2011年8月にオープンされました。 初めて私が訪れたのは約10年前、滋賀の友人を通して出会ったまなみさんに会いに行きました。素材にこだわったChar* by cheep-cheep ブランドを設立されていて、その後 滋賀の麻織物を使用していただくことにもなりました。 ◼︎あまづつみ まなみさん 略歴 神戸ファッション専門学校を卒業後、上京し45R、東京イトキン シビラ、ホコモモラ  などアパレル数社に勤務されていました。その後出産を機に退職し、自宅で外注のパターンナーの仕事を始めて Char* by cheep-cheepを設立、 2007年にUターン移住されました。 ◼︎ノラふく ・淡路島の刺し子「ドンザ」との出会い。 ドンザは藍で染めた木綿布を数枚重ね、防寒や補強のために刺し子を施した漁師着のこと。震災後の倒壊家屋から発見されたそうです。 まなみさんは、ここで初めて淡路島に藍染めがある事を知り衝撃を受け、淡路島に帰って来た意味がここにあるのではないかと感じたと言います。 ・滋賀の自然に寄り添いながら生活することを愉しむ集まり「ノラノコ」との出会い そんなタイミングで、農作業に従事するにあたって機能的でカッコ良い野良着を作って欲しいとの依頼があり、「ノラふく」をつくることになります。 どこで藍染めをするかを考えた結果、ノラノコの活動拠点である滋賀の正藍染紺屋・紺喜染織さんに通うようになります。 最初に藍染め体験で訪れてから10年。今ではすべての藍がめを使わせてもらえるまでの信頼関係を築かれています。まなみさんの月に2回の藍染め通いは、紺喜さんにとっても次代へ継ぐ道筋になっている事と思います。 ◼︎意味がある服 「ノラふく」を作るようになって10年が経ち、最近染め直しの依頼が増え

REPORT_12 横濱スカーフ/株式会社 丸加 

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■ 高い捺染技術と丁寧な手仕事による上質なスカーフ 今回は横浜でシルクのスカーフを中心としたオリジナルブランドのデザイン企画・製造から卸売、また受託製造でものづくりをされている株式会社丸加さんをご紹介します。 1952年の創業以来、手捺染によるこだわりと、精度の高いプリント技術により極めて上質なスカーフを製造されています。その技術の高さはプリントで名高いイタリア・コモとも肩を並べるほどです。  手捺染にこだわる理由は主にペネトレーションとスクエアネスにあります。首に巻くと裏も表も見えるスカーフは、裏が白いと価値が落ちるため、裏まで色を浸透させる必要がある。加えて、タテ・ヨコの地の目を正確に揃える必要がある。これらを考慮すると、オートスクリーンやインクジェットプリントより手捺染のほうがはるかに優位性が高いからです。 ■ スカーフができるまでの工程 生産は分業で行われ、栃木県足利市の捺染工場にて捺染・蒸しの工程が行われています。 〔デザイン〕  様々な資料をもとにデザイン(図案作成)される。デザインによっては1〜2年をかけて丁寧に打ち合わせを重ね、デザインを練る。 〔製版〕  使用する色の数だけ捺染用の型をそれぞれ制作する。捺染用の型は型枠に薄手の紗を張ったもの。現在のように合成繊維が使用される前はシルクを使用しており、その名残からシルクスクリーンとも呼ばれている。スクリーンを使った捺染は1927年頃に世界的に広がったと考えられている。日本にも同じ時期に伝わる。 〔調色(色合わせ)〕  ミリグラム単位で計測した染料と糊を混ぜ、色糊を作る。 〔地張り〕  捺染台に生地を張る作業。生地の方向を確認し台に対し水平垂直に張っていく。この作業がプリントや縫製、仕上がりを左右するため慎重に行われる。 〔手捺染〕  型とスケージと呼ばれる大きなヘラを使用。向かい合って配置されている約25mの捺染台を往復し、色ごとに捺染していく。 〔蒸し〕  捺染の後に熱を加える事で染料を生地に固着する。 〔水洗〕  糊を落とし、色落ち等を防ぐために余分な染料を落とす。 〔縫製〕  職人さんが手でロール状に巻き込みながら均一に縫っていく「手巻き」と呼ばれる方法で、一針一針丁寧に縁を縫って仕上げる。手間がかかる作業であるが、ソフトでふっくらとした縁に仕上がる。   ■ ファクトリーブランド 丸加さんでは