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REPORT_23 植山織物 ̶ 伝統と革新が息づく播州織

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伝統技術と技術革新によるものづくり  兵庫県多可郡多可町は、豊かな自然と清らかな水に恵まれた、日本有数の織物産地「播州織」の中心地として知られています。植山織物は、その地で 1948 年に創業しました。播州織は、糸を染めてから織る「先染め」の綿織物で、シャツやストールなどに使われる軽やかで心地よい風合いが魅力。植山織物は、その伝統的な技術を受け継ぎながら、新たな時代の感性やニーズに応えるものづくりへと挑戦を続けています。  広大な工場内には、ビーミングやサイジング設備に加え、エアジェット織機 48 台、レピア織機 8 台、シャトル織機 17 台が設置され、多様な生産体制を支えています。エアジェット織機やレピア織機は高速かつ安定した織布が可能で、 精密で均一な品質の生地を織り上げることができます。一方、シャトル織機は糸に過度な力をかけずに織るため、やわらかくふんわりとした風合いを生かした生地づくりに適しています。こうした多様な織機を活用することで、植山織物 では幅広いニーズに応える製品づくりを実現しています。  さらに、工場内には 4,000 種類を超える生地のストックがあり、長年培ってきた技術と経験がそこに蓄積されています。 これらのサンプルは QR コードで管理されており、必要な情報を迅速に検索・共有できる体制を整えています。こうした管理システムと豊富な在庫により、注文から納品までをスムーズかつ的確に対応することが可能となっています。 クリエイティビティとブランド展開  生地の製造からはじまった植山織物では、現在ファブリックブランド「BasShu」やシャツブランド「Shuttle Notes」など、5 つのブランドを展開しています。いずれのブランドにも共通しているのは、播州織の技術を土台としながら、新たな価値を生み出そうとする姿勢です。ショールームで拝見して印象的だったのは、生地にあえてブリーチ(漂白)やダメージを加える加工技術でした。伝統的な織物に “ラフさ” や “経年変化” といった新たな魅力を与えることで、テキスタイルそのものをひとつのプロダクトとして成立させています。    こうした取り組みが形になるまでには、さまざまな試行錯誤があったといいます。新たな挑戦のたびにトライアンドエラーを重ね、時にはアイデアが形にならないこともあったそうで...

REPORT 22 有松鳴海絞り 伝統と革新を巡る特別ツアー

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3 月 28, 2025 2025年3月28日、TDA産地教育委員会主催の産地見学会「有松鳴海絞り 伝統と革新を巡る特別ツアー」が開催されました。TDA会員、一般、学生あわせて総勢28名が参加し、江戸時代から400年以上続く絞りの町・有松を訪れました。歴史ある工房や商家を巡り、熟練の技を間近に体感するとともに、世界的ブランド 「suzusan」での特別プログラムにも参加。伝統と現代が交差する有松の魅力を存分に味わう一日となりました。 技の迫力とやさしさ  ―  有松鳴海絞会館での実演見学 研修の最初のプログラムは、有松鳴海絞会館での実演見学でした。絞りの担い手である女性が布を折り畳み、糸でぎゅっぎゅっと脈を打つように締め上げていく姿は、迫力にあふれていました。糸が布に食い込む強さの中にも、布を大切に扱うやさしさがあり、絞りの技が力と繊細さの両面から成り立っていることを実感 しました。「子供の頃、夏休みに糸括りをして、初めてお金をもらった時に仕事として成立したと感じた」と語る言葉には、絞りが生活に根づいていた時代の記憶 がにじんでいました。糸括りの一定のリズムを刻みながら、さまざまな技法を実 際に示してくださり、「自分の手に合わせて道具を作る」とのお話からも、技を長 く続けるための工夫を知ることができました。学生たちは、迫力とやさしさが同 居するその手仕事に深く引き込まれ、真剣なまなざしで見つめながら質問を投げかけ、伝統の奥深さに触れていました。 有松絞りの祖を継ぐ家 ― 竹田嘉兵衛商店 次に訪れたのは日本遺産構成文化財であり、名古屋市指定有形文化財でもある竹田家住宅。有松絞りを考案した “有松・鳴海絞りの祖” 竹田庄九郎の流れをくむ商家が、寛保年間に分家して誕生した「竹田嘉兵衛商店」を訪れました。有松で現在も着物を扱っているそうです。重厚な絞り作品が並ぶ座敷にて、竹田昌弘氏から直接お話を伺いました。徳川家茂や勝海舟も訪れたと伝わる茶室をはじめ、歴史がしみ込んだ空間で語られる言葉からは、伝統を守りながら新たな挑戦を続ける竹田家の姿勢を強く感じることができました。 suzusan  ―  伝統を未来へつなぐ挑戦 有松駅から徒歩 2 分ほどの場所...

REPORT_21 TDA福井産地見学ツアー

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今回は、2024年11月14日(木)に開催したTDA産地見学ツアーの様子をレポートします。訪問先は、カーテンの製造・販売を手がける 株式会社カズマ と 株式会社エイト の二社です。 【株式会社カズマ】福井市八重巻町 2023年10月開催の mini mimi expoで、TDAの賛助会員として出展していた株式会社カズマの工場長・東由里絵(ひがし ゆりえ)さんと出会いました。カズマさんが出展されていた、カーテンの生地ミミを活用した素敵な作品の数々に惹かれると同時に、若い女性である東さんが工場長を務めていることにも興味を持ちました。また、製造統括部の 田中滋(たなか しげる)さんとは産地同士の話で盛り上がり、工場見学が可能であることを知りました。そこで、私が所属する湖東繊維工業協同組合での見学をお願いしました。このご縁がきっかけとなり、TDAの産地見学ツアーが実現しました。 ①(株)カズマの概要ならびにSDGsへの取り組み 企業理念「絆」経済・豊かさの創造 スローガン「”変わる”を恐れず挑戦をし続ける」 田中さんより、大変丁寧な説明を受け、企業の努力や理念に深く感銘を受けました。 特にアップサイクル商品の開発では、生地ミミを縫い合わせる作業を福祉施設に依頼し、地域と連携している点が印象的でした。また、夏休みの子供企画として、「お母さんの働く職場を知る」「お母さんの仕事を理解する」「お母さんと一緒に作業しながら縫製の楽しさを体験する」といった取り組みも実施されています。女性従業員が8割を占める職場ならではの、温かく魅力的な発想だと感じました。 ②工場内見学 壮大な工場を、工程の順に沿って見学させていただきました。まず目を引いたのは、明るく整理整頓された清潔感あふれる環境です。そして次に気づいたのは、従業員の若さと女性の割合の高さでした。一心不乱にミシンを操る指先には、美しく施されたネイル。制服の帽子やエプロンもおしゃれで、若い女性の気持ちを大切にした職場であることが伝わってきました。また、働く人々の動きは機敏で、オートメーション化された工程と手作業の工程が絶妙に組み合わさり、効率の良さが感じられました。 ③ランチ交流会 株式会社カズマの皆さん4名とともに、福井名物の「海鮮丼」を味わいながら交流を深めました。工場見学の感想を共有したり、仕事に関する悩みや意見を交わしたりと、...

REPORT_20 鳥取県の弓浜絣の若き担い手、中村夫婦を訪ねる / 絣音工房・中村さゆり氏

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 「鳥取県の弓浜絣の若き担い手、中村夫婦を訪ねる」/  絣音工房・中村さゆり氏 今回は国の伝統的工芸品に指定されている弓浜絣を紹介させていただく。弓浜絣は、鳥取県西部の弓ヶ浜地方で生産されているが、現在は数軒しか生産されておらず、中でも江戸時代に栽培が始まった「伯州綿」を手で紡ぎ、手括り工程を経て、天然藍を建てて糸染めを行う、そして高機の手投杼で絣模様を織り出す手仕事による絣は貴重なものである。 現在この工程作業を分業含め、全て行っている反物の製作に携わっている方は、4、5名ほどしかおらず、伯州綿の畑を持ち栽培し、すくもの天然藍を自ら建て、糸を紡ぎ、絣括りを行い、手機で織る全ての工程を一人で行っている方は、さらに少ない。その中の一人が「絣音工房」の中村さゆり氏である。さゆり氏はかつての私の教え子であり、大学卒業後に地元の弓浜絣の第一人者であった故嶋田悦子先生に弟子入り、研鑽を積み独立をする。さゆり氏の夫も弓浜絣の職人であり、「中村括り」という工房を立ち上げ、夫婦で弓浜絣の制作に励んでいる。 令和5年6月に私の本務校である金沢美術工芸大学のプロジェクト「平成の百工比照」のコレクション収集の為に現地に向かうこととなった。この弓浜絣の工程見本制作及び材料、道具等の提供には、さゆり氏だけでなく、夫の武志さんも快く協力してくださった。提供された工程資料は、①綿花、②繰り綿、③種、④紡錘状の糸、⑤車カセ、⑥型紙、⑦絵図台に張った種糸、⑧染め前の緯括り綛糸、⑨染め後の緯括り綛糸、⑩糸割り済み糸、⑪小管巻糸、⑫経糸40/2綛の白、⑬経糸40/2綛の紺、⑭製織布の計14点、その他にいくつかの弓浜絣の古布も入手し、「平成の百工比照」のコレクションとなっている。 弓浜絣は1975年に国の伝統的工芸品に指定されている。弾力のある伯州綿を手紡ぎした糸は膨らみがあり、手仕事でしか生まれない風合いを持ち、保温性に優れた織布となる。意匠の特色は、鶴亀や松竹梅などの吉祥紋様や、動物、幾何柄、草花や風景など、限りなく豊かな柄バリエーションがある。代々織り継がれてきた弓浜絣は、人の想いとそれぞれの時代が感じられる庶民の為の織物である。 工程見本の制作依頼と調査を兼ねて、鳥取の弓ヶ浜地方に出向き、様々な弓浜絣を見るとともに伯州綿の栽培されている弓ヶ浜半島を訪ね、米子市山陰歴史館の学芸員さ...

REPORT_19 「和紙を現代のあたりまえに」/山次製紙所

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【山次(やまつぎ)製紙所】 所在地は福井県越前市大滝町という自然豊かな場所に位置しています。この地域は清らかな水と豊かな自然に恵まれ、古くから越前和紙の産地として知られていて、工房の近くには紙祖神「川上御前」を祀る大瀧神社があり、手仕事を守る職人の方々の聖地として親しまれています。 山次製紙所は明治元年創業の手漉き和紙の工房です。伝統を守りつつ独自の製法を生み出し、「和紙を現代のあたりまえに」をビジョンに現代の技術と融合させた新しい技法で日常に馴染む和紙商品を展開しています。特に工房独自の技法「浮き紙」は表面の凹凸がはっきりとしており、柄が浮いたように見えるのが特徴で、また裏側がフラットなので貼り付けたり、縫ったりできるので布で作るような加工ができ汎用性の広い使い道が可能です。 筆者がこの工房と出会ったのは、2023年秋の某企業主催の「日本のものづくり展」で、工房の独自手法「浮き紙」の作品に出会ったことがきっかけでした。浮き紙の想像を超える和紙の質感と日常に向けての多様な用途の作品に感銘を受け、昨年2024年秋に、手隙き和紙の現場に伺う機会があり、その感動を伝えたくてレポートにさせていただきました。 和紙はかつて日本人の暮らしに欠かせない存在だったのが、洋式の生活環境の変化でその役割が減少してしまいました。工房は和紙が今の日常で使われる環境を目指し、工房の現場や作品を、国内だけでなく海外に向けてもSNSで発信しています。 デジタル化が進む近年では、紙の存在意義をも問われる時代に、丈夫で加工がしやすい和紙が、暮らしの中で自然に使われるような環境をつくって行きたいと山次製紙所様独自の冊子でも語っておられます。次ページにその冊子から画像を抜粋させていただきました。 【昨年2024年11月工房に訪れた際のレポートです】 冊子抜粋の中の工房ビジョンとして掲載されている「浮き紙」と「透かし」の作品と工場見学の報告になります。以下添付は「浮き紙」と「透かし」技法と作品 (工房の冊子より抜粋) オンラインでも販売されている茶缶や名刺入れ、紙箱は浮き紙を貼り付けた作品で、一筆箋は透かしの技法で製品化された作品です。どれも暮らしの中でその質感を楽しめ、 心を豊かにしてくれる作品です。 工房では残念ながら浮き紙の制作現場は非公開とのことで、通常の和紙づくりの現場を見学させていただきました...

REPORT_18 suzusan | 2025春夏 新作展示会

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  ・7月31日(水)-8月4日(日) 10:00-18:00 ・EATME GALLERY 南青山2-22-17川上ビル9F ・テーマ:“PLAY” 子どもの頃に時間を忘れ夢中になって遊んだ シーンをイメージした、カラフルで楽しげな色柄を表現したコレクション TDA正会員の村瀬弘行氏が率いる【suzusan 2025春夏新作展示会】に 8/1(木)にお伺いしました。 会場に到着すると、テーマである【PLAY】らしいカラフルな色が目に飛び込んできました。本当に天然繊維かな?と思ってしまうほど、色鮮やかなアイテム達が出迎えてくれました。特にイエローはとても発色の良いカラーでした。 柄はトランプをイメージしたモチーフを、絞りテクニックで表現されておりました。一見して思った通り、その表現はなかなか難しいようで、プロの皆さまでも特にクローバーは、難易度が高いとのことでした。 また、スマイルマークも絞りで表現されており、楽しさ満点。着る事で毎日が楽しくなりそうです。 ベースのマテリアルは、モンゴルやネパールのカシミアが主体です。アパレルブランドでも、春夏企画でのカシミア展開は珍しいそうですが、一年の多くをカシミア素材で過ごせる欧州に多くのクライアントを持つ、スズサンならではの特徴と言えそうです。 他にも、播州織のギンガムチェックや、度詰めのコットン、今回は春夏でしたので展開されておりませんでしたが、尾州のウールなど、日本のテキスタイルも色々と取り入れられております。いつものコレクションでは、リネン素材も多く見受けられますが、今回から新規にシーアイランドコットンも採用されて居りました。 https://seaislandclub.jp また、コットンライクのシルクもアイテム展開されています。 触感で本物のマテリアルを感じ、視覚でパターンの面白さや楽しさを感じる。 とても今を感じるアプローチだと感じました。 suzusanは、長い間人間が作り出すテキスタイルの加飾テクニック「絞り」で、私たちの日常着に新しい風を吹かせ続けています。時代に沿った変化とともに、手で作る事の大切さを改めて感じる事ができました。 REPORTER:大場麻美(TDA理事長) suzusan:website https://www.suzusan.com/ja/ Instagram:suzusan o...

REPORT_17「心踊る日常」/ イラストレーター hirotajunko

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日々の生活に彩りを添えること、自分だけの特別感を味わうこと、そして様々なカタチで イロが持つ力を伝えていく活動をされている、TDA正会員の廣田純子氏をご紹介します。 【アフリカ文化との出会い】 大阪生まれ。京都市立芸術大学ビジュアルデザイン科卒業後、テキスタイルメーカーのデザイン部3年勤務後に渡仏。パリで「フランス国立高等装飾美術学校(ENSAD)」にてイラストレーションを2年半、ペーパーデザインやテキスタイルデザインデザインを学ばれました。フランス在住時に、モンマルトルのテキスタイルショップで「アフリカの布」に出会い、西アフリカに魅せられブルキナファソへ。友人宅に約20日間滞在し、現地の染織を見て学ばれたそうです。その中で、風土から生み出される文様や技法は自国日本にも通じることに気づき、日本を見直すきっかけとなり日本でものづくりをしたい気持ちが大きく動いたとのこと、フランスとアフリカ文化に影響され帰国されます。 帰国後は再びテキスタイルデザインの仕事を始められます。現在フリーランスとしてイラスト、テキスタイル、雑貨、絵本など日仏で活動されています。 ヒロタさんとの出会いは確かTDAのセミナーで、一時帰国されていた頃だったかと記憶しています。ヒロタさんのイラストのセンスに惹かれ、展示会のイメージに合わせて麻の布に手描きしてもらうことがありました。その頃から今に至るまで長くお付き合いをいただいています。 【フェアトレードとの出会い】 その後、フェアトレードの会社との出会いが、ヒロタさんの活動に大きな影響を与えました。 社会的背景もあり、循環のことに関心が深まるタイミングだったと思います。 使われたものに再び手を加え新たなものへ、そして次に回していくという姿勢、ヒロタさんなりの感性が活かされて行く事になります。 古着にもう一手間加える。染めて刺繍してペイントして 「巡り巡る循環する服」。 リメイクすることや端材を活かす事に注目をし、また手元にある残布や残糸を活かしたアクセサリー作りが始まって行きます。 「アップサイクル」としての作品が定着していきます。 【子ども向けWS】 美術館、百貨店、ショップなどで子ども向けWSにも熱心に取り組んでおられます。 何でも簡単に手に入る時代に、何もないところから生み出す力、創造力を養っていきます。 様々な素材(端材)に触れ、感覚、ひらめ...